健康経営という言葉は定着しつつあり、経済産業省も健康経営銘柄、健康経営優良法人の制度を設置し、法人に対して積極的に取り組むような施策が展開されています。こういった銘柄は、起業が従業員を大切にしている事を示すと共に、若手が会社を選ぶ際の安心材料になる良い仕組みだと思います。健康経営に取り組んでいる企業では、日々の勤怠はPCの起動時などに記録され、36協定や健康管理時間に引っ掛かりそうな従業員と上長には月中にアラームメールを送信し、勤務時間の調整を迅速にできる仕組みが定着しているケースが多いです。

しかし、コロナ化により劇的に変化したワークスタイルは、これまでとは異なる問題事象を引き起こしています。コロナにより定着化したリモートワーク、これによりオフィスで顔を見る機会が少なくなり、雰囲気でチームメイトの調子を感じることができなくなりました。調子悪い人にぱっと見で気づくことができない環境になってしまったのです。

また、少子高齢化、労働力不足という社会環境は、採用向けにホワイトな企業でなければいけないといったコンプライアンスへの対応も重要になっています。その結果、若手の労働環境は守られるようになってきていますが、そのあおりで上位層に行くほどより激務になり体調を崩す人も増えています。今に始まったことではないとは思いますが、パワハラ、残業時間圧縮、リモートワークといった変化のなかで、その負荷は昔よりも大きくなっており、ミドル層でバランスを崩す人が多くなっていると肌で感じています。

つまり、健康経営を実現しようとすることにより、組織の中にこれまでにはないゆがみが生じ、これまでとは異なるゾーンで不健康が生じているとも言えます。健康経営を反対しているのではなく、ワークスタイルの変化により生じた新たな問題を踏まえて、負荷が偏らない組織づくりことが健康経営のポイントなのではと考えています。こういった施策は総務や人事部が中心になって取り組むため、スタッフ系の残業時間がものすごく多くなっているという話も聞きます。どうしようもなく始めたリモートワーク、労働力不足により変化する組織環境、コロナが生み出したワークスタイル変化への対応はこれからが本番なのかなと感じています。